着物を買い取りにに出す際には、着物専門の買取業者へ依頼するのが一般的です。
しかし、業者選びを間違うと、着物を安く買い叩かれたり、売る予定のない貴金属などを強引に買い取られてしまうなどの詐欺被害にあってしまうこともあります。
着物買取の際のトラブルは決して他人事ではありません。
事実、詐欺被害は年々増加し多くの人が被害に遭っています。
今回の記事では、着物買取の詐欺被害の現状や、悪徳業者の手口、また安全な取り引きを行うための方法などを解説します。
着物買取の詐欺は今でもある?被害件数は?
着物を買い取りに出す際には、着物専門の買取業者へ依頼するのが一般的です。
着物の買取方法には、主に以下の3つの方法があります。
- 持込買取(売りたい着物を店舗に持込み査定してもらう)
- 宅配買取(売りたい着物を業者に送り査定してもらう)
- 訪問買取(買取業者が自宅を訪問し査定を行う)
上記の買取方法の中でも、特に訪問買取の詐欺被害が多発しています。
訪問買取は、査定士が自宅に訪問し、査定を行ってくれるサービスです。
そのため、大量の着物が自宅にある場合や、店舗に持ち込む交通手段が無い場合、また足腰の悪いお年寄りなどには大変便利です。
しかし、買い取り業者の中には着物買取を口実に、強引な手口で貴金属を無理やり買い取る「押し買い」をする悪徳業者も存在します。
以下は、国民生活センターによせられた「不用品や和服の買取のはずが、貴金属を買い取られた」といった相談件数の推移です。
年度 | 相談件数 |
---|---|
2020 | 6,018 |
2021 | 6,922 |
2022 | 7,760 |
2023 | 986(前年同期791) |
上の表の通り、相談件数だけでも年々増え続けており、実際の詐欺被害はそれ以上であることが容易に想像できます。
相談件数のうち、特に60際以上の高齢者の割合は全体の約7割、また女性の割合は約8割です。
高齢者が狙われやすいのは、認知能力や判断力の低下、また女性の場合は、高圧的な物言いに弱い、脅しに弱いなどが理由として挙げられます。
着物の買取詐欺をする業者の特徴
それでは、買取詐欺を行う悪質業者はどのような手口で利用者を騙すのでしょうか?
以下、主な8つの手口についてそれぞれ詳しく解説していきます。
- 飛び込み営業で訪問してくる
- 訪問時に訪問目的を告知しない
- 着物の査定時に古物商許可証の提示がない
- 貴金属やブランド品類がないか聞いてくる
- 断っても売らないと帰らない
- 査定後にキャンセルできない
- クーリングオフや相談窓口の案内がない
- 宅配買取を依頼した着物が紛失
それぞれの項目について具体的な事例がある場合には、それもあせて紹介していきます。
飛び込み営業で訪問してくる
買取業者が事前にアポを取らず、飛び込みで自宅を訪問してくる業者は悪徳業者です。
買取業者は、「特定商取引法」により、訪問買取の勧誘を求めていないものに対して勧誘してはいけないという取り決めがあるからです。
一般的に訪問買取は次のような流れで行われます。
- 電話、またはネットで出張買取を申し込む
- 査定当日に自宅を訪問
- 査定
- 査定金額を確認し、現金を受け取る
利用者が事前に買い取りの依頼をしていないのに、突然の訪問で品物を買い取ろうとする業者には注意が必要しましょう。
アポなしで着物の買い取りをすすめてくる業者が自宅に訪問したら、話を聞く前にきっぱりと断ることをおすすめします。
「映画の撮影で使う古い着物を探している。お宅に着物はありませんか?」と女性から電話があった。着物ならたくさんあるので、家に来てもらうことになったが、しばらくすると、男性二人がやってきた。不審な感じがしたが、2階へ案内した。着物ダンスの着物を見せていたら、突然、「貴金属はないか?」と言って、着物はそっちのけで、貴金属を強引に買い取っていった。早く帰ってほしかったが、なかなか帰らず、階下の箪笥も勝手に物色し、「これもあれも買い取る」と言って、こちらが断っているのに強引に買い取り、帰ってしまった。
引用元:橿原市
訪問時に訪問目的を告知しない
訪問時に訪問目的を告知しない業者にも注意が必要です。
特定商取引法により、業者側は「勧誘に先立って事業所名や勧誘する品物の種類などを明示しなければならない」と定められているからです。
悪徳業者は、着物買取を入口として、時計やアクセサリーなどの貴金属を買い取ろうとする魂胆があるため、あらかじめ品物の種類を明示することができません。
事前に確認を行うと、貴金属の買取ができなくなってしまうからです。
買取業者を名乗りながら、訪問目的を告知しない業者には警戒してください。
買取品についての事前告知をおこなわず、さらにこちらから告知を促しても言葉を濁すような場合には、迷わず引き取ってもらいましょう。
着物の査定時に古物商許可証の提示がない
査定時に、古物商許可証の提示がない場合は、悪徳業者であることを疑いましょう。
着物の買取時、業者は古物商許可証の提示を必ず行わなければいけないと定められているからです。
古物商許可証とは、事業として中古品売買を行う歳に必要となるもので、着物の買取の際にも当然必要となる証明書です。
訪問時、古物商許可証の提示がない場合、または携帯しておらず「会社に忘れた」などと言い逃れをする業者には注意が必要です。
業者が査定を始める前に、退去を求めましょう。
貴金属やブランド品類がないか聞いてくる
着物の買取を依頼したのに、着物はそっちのけで貴金属やブランド品の買い取りを強要してくる業者には注意しましょう。
あまりのしつこさに根負けし、見せてしまうと高圧的な態度で無理やりかつ、安く買い取られてしまいます。
売る予定のない貴金属やブランド品の買い取りを迫られたら、はっきりと断りましょう。
「着物を買い取る」と業者から電話があり来訪を許可した。用意した着物は少し見ただけで、「貴金属はないか」としつこく聞いてきた。断ったが長時間居すわられ、しかたなく指輪を見せると強引に買い取られた。後で調べると相場の半値以下だった。
引用元:岡山市
断っても売らないと帰らない
買い取りを希望している着物だけを査定して欲しいのに、貴金属の買い取りを強要し、断っても売るまで帰らない業者も存在します。
だからといって、高圧的な態度に押されて貴金属を見せてしまうのはNGです。
査定額に納得がいかず断ろうとすると、「今売らないと価値が下がる」といった脅し文句を使い、しつこく売却を迫り、売るまで居座り続けます。
もし、業者がしつこく居座る場合には、毅然とした態度で断ることが大切です。
退去を求めたのに屋内に居座る行為は犯罪行為です。
それでも帰らない場合は、消費者センターに相談するか、最寄りの警察に連絡しましょう。
「不用品を買い取る」という業者から電話があった。電話の感じは良かったが、来訪時は「貴金属はないか」など強引な態度になった。
引用元:松伏超消費生活センター
貴金属を売るつもりはないと断ったが、引き下がらないので仕方なくアクセサリーをいくつか見せた。
「これではだめだ、値段の付く貴金属はないか」と言われ粘られた。
怖くなり仕方なく指輪を見せたら、千円を置いて持っていかれてしまった。
査定後にキャンセルできない
通常は、着物の査定後、提示額を確認し、以下の理由などから取り引きに納得がいかない場合にはキャンセルが可能です。
- 査定額が思ったより低い
- 家族と相談してから売るかどうかを決めたい
- 他の業者にも査定を依頼し買取額の高い業者と取り引きしたい
査定後にキャンセルした場合でも、大手や良心的な買取業者のほとんどは、出張費、査定料は無料です。
しかし、悪質な業者か「ガソリン代がかかった、キャンセルなら出張費を払え!」と、高額なキャンセル料を提示してくるケースもあります。
このようなことを避けるために、訪問買取を依頼する際には、査定後にキャンセルできるかどうかを事前に確認しておきましょう。
クーリングオフや相談窓口の案内がない
業者との買い取りに関するやり取りの中で、クーリングオフや相談窓口の案内がない場合にも注意が必要です。
クーリングオフとは、消費者が意図しない取り引きの場合、一定期間内であれば契約を取り消せる権利です。
業者側は、特定商取引法により、買い取りの際にこのクーリングオフについて記載した書面を交付し、さらに口頭で説明する義務があります。
そして、訪問買取の場合は、契約書面を受け取った日を含めて8日間、いつでも一方的に契約を解除することができます。
大手の買取業者や良心的な買取業者は、クーリングオフ、訪問時の査定士の買い取りなどに関する相談窓口を設け、いつでも連絡が取れるようになっています。
しかし、着物を安く買い叩き、そのまま契約をなし崩しにしたい業者にとっては、クーリングオフの告知、ましてや相談窓口などを設けたくありません。
契約書面が交付されていない取り引きについては、日数の制限なしでいつでも契約を解除することができます。
大切な着物を不本意に手放してしまわないためにも、あらかじめ利用者側もクーリングオフについての知識を知っておきましょう。
宅配買取を依頼した着物が紛失
悪徳業者の詐欺被害にあうのは、訪問買取だけではありません。
宅配買取の場合にもトラブルが発生することがあります。
先ほども触れましたが、宅配買取とは、買取を依頼したい着物を業者に送り査定してもらう方法です。
しかし、相手が見えないため、よほど信頼のおける買取業者に依頼しないと以下のような被害にあってしまいます。
- 業者が実在しなかった
- 送った着物を返品してくれない
- キャンセルの連絡を受け付けない
- 転売してしまったと言われた
一般的な業者は、送った着物についての査定を行った後、買取額を利用者に提示しOKなら買い取りという流れで進めます。
しかし、大切な着物が悪質な業者に渡ってしまうと、戻ってくることはまずありません。
宅配買取を利用する場合には、大手の買取業者か、また直接対面して査定してもらえる、持込買取か訪問買取を選びましょう。
着物の買取詐欺を避ける方法
それでは、買取詐欺を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
以下、悪徳業者に詐欺被害にあわないための回避策を解説します。
大手の着物買取業者を利用する
着物買取の詐欺被害を避ける一番の方法は、大手の買取業者へ依頼することです。
大手の買取業者への買取依頼をおすすめする主な理由は以下の通りです。
- 着物に詳しい経験豊富な査定士が在籍している
- 業者全体の買取実績が豊富
- 利用者の満足度が高い
- 公式HPなどで事前に買取の流れを確認することができる
信頼を売りに買い取り業務を行っている大手買取業者は、適正価格での査定はもちろん、お客様対応にも注力しています。
そのため、詐欺行為を行うことはまずありえません。
お客様ファーストで丁寧に、納得できる形で取り引きを行うことができます。
買取業者を選ぶ際は、テレビCMや新聞広告、ネットで見かけるよな業者、さらに口コミ評価が高い業者を選びましょう。
会社の情報を確認する
買取業者が訪問したら、すぐに取り引きする会社の情報を確認しましょう。
先ほども触れましたが、買取業者は訪問時、利用者に対し以下を行うよう義務付けられています。
- 名刺(会社名、住所、電話番号などの会社の情報が記載されたもの)
- 古物商許可証の提示
- 訪問目的の告知
会社の情報を確認せず、取り引きを始めてしまうのは危険です。
取り引き後、業者との連絡が取れなくなり、クーリングオフできなくなるというケースも考えられるからです。
そうなれば、大切な着物が二度と手元に戻ってくることはまずありません。
後で後悔しないためにも、まずは会社の情報を確認しましょう。
査定時に家族に付き添ってもらう
査定時には家族に付き添ってもらいましょう。
その理由は以下の通りです。
- 複数の目があることで、冷静な判断を下しやすくなる
- 悪徳業者が強引な営業手法を使うことができにくくなる
- 契約書類に虚偽がないかを一緒に確認できる
家族以外に、着物に詳しい知人などがいれば、同席をお願いしましょう。
そうすれば、業者が適正な価格で買い取りを行ったかを判断してもらうことができます。
悪徳業者は、一人暮らしの女性や、老人などを狙って、高圧的な態度で依頼してもいない貴金属の買取を強要してきます。
詐欺被害のリスクを避けるためにも、査定時には家族や知人に付き添ってもらう事を強くおすすめします。
まとめ
着物の買取詐欺を避けるためには、信頼できる業者選びが最も大切です。
また、クーリングオフなどの精度や、詐欺の兆候を見逃さないための知識を身に付け、適切な対策を講じることで、安心して取り引きを進めることができます。
万が一、詐欺にあった場合でも、消費者センターや警察に相談することで解決の糸口が見つかります。
大切な着物が正当に評価されるために、利用者側である私たちもしっかりと準備を整えましょう。